改正民法と住まいに関わる契約の注意点 その5(最終回)

改正民法と住まいに関わる契約の注意点 その5(最終回)

~まずは約款の内容を押さえましょう!~

改正民法について四回にわたって連載をしてきましたが、如何でしたでしょうか?連載第一回でも触れましたように、今回の民法改正は、判例・学説により確立したルールの明文化、「わかりやすい民法」を目指したものですから、今までと何かを大きく変えることを目指している訳ではありません。ただ、法的な論理構成が変わった部分もあり、弁護士の先生方もその影響について種々議論をされているようですが、現時点では「従来の運用と大きく変わらないはずだが、実際に実務が動かないと(裁判になって判例が蓄積されないと)分からない」と言うのが実情のようです。

ところで、民法では契約は口頭でも成立するとされているので、特に書面を作成しなくても、双方の意志の一致がありさえすれば契約は成立します。トラブルがなければ口約束でも一向にかまわない訳ですが、何か行き違いが生じた場合には、基本的には契約書に書かれている内容と、今回の改正民法に即していえば、「社会通念」に従って解決していくことになりますので、契約に際しては、できるだけ細かく取り決めを書面化しておくことが望ましいことになります。
ただ、事業者からすれば、何度も同様の契約を締結するのに、都度都度一から詳細な契約書を作成するのは現実的ではありません。そこで、通常は「契約約款」という、あらかじめ定型化された契約条項を契約書に添付しています。約款は、先日ご紹介した「民間(七会)連合協定建築工事請負契約約款」(請負契約の場合)などの業界団体が作成した約款の他、住宅会社が独自に作成した約款が使われる場合もありますが、いずれにせよ、長年業界内で行われて来た商慣行や、関連法令からの規制事項が盛り込まれているのが通例です。民法の規定より契約内容が優先する、という原則もありますから、改正民法を勉強するより、約款をしっかりと読み込むことが重要かもしれません。(なお、住宅取引に係わる約款は、今回の改正民法で新設された「定型約款」には当たらないと考えられています。)

約款についての細かな解説は本稿の範囲を超えますが、改正民法に関係する部分で言えば、「契約不適合責任」(建物に不具合が生じた場合)の他に、「引き渡し前に建物が天災等で滅失してしまった」、「途中で契約をやめたい」、「引き渡しや代金の支払いが遅延した」と言った場合の取り決めも注目点かと思います。その他にも約款には重要なことが書かれていますから、疑問点については事業者に十分に確認し、内容をよく理解した上で契約書に判を押すよう、くれぐれもお願いいたします!

(注記)
本コラムは、建築士の立場から見た改正民法の住まいづくりへの影響について、個人的見解をお話しているものです。改正民法や契約などの詳細については、弁護士等の法律専門家にご相談くださいますようお願い致します。

住まいのナビゲーター 
一級建築士 金山 眞人

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