改正民法と住まいに関わる契約の注意点 その3

改正民法と住まいに関わる契約の注意点 その3

~住宅の請負契約、どこが変わる?~

新築、リフォームに限らず、「住まいづくり」の工事を依頼する場合、住宅事業者と「請負契約」を締結することになります。請負契約は「有償契約」という、対価性のある契約の一種ですが、今回の改正民法では、売買契約を有償契約の基本的な形と考え、請負契約などの他の有償契約については、異なる部分のみを記載する形になりました。また、契約に対する責任のあり方に関する法的なロジックに変更があった他、建築物(土地に定着する工作物)に関して特別に規定されていた条文の廃止もありました。このように、有償契約に関する部分が大きく変わった今回の改正民法ですが、催告や権利行使に係わる部分は難解なので、あまり深入りせず、これから住まいづくりをされる方にとって重要と思われる点を中心に見ていきたいと思います。

 まず、今回の改正で「瑕疵」が「契約不適合」に変わりましたが、前回お話ししたように、責任を問える内容自体には大きな変化はないと思われます。ただ「どのタイミングで、どの方法で責任を果たすことを請求できるのか」については、例えば施主が請求した方法と異なる方法での履行も可とされていますので、議論になる可能性がありそうです。また従来、建築物等は、完成後の契約解除ができないとされていましたが、今回の改正では当該条文が削除され、解除ができるようになりました。ただ、その場合でも軽微な場合は除くとされており、また、従前でも建替え相当金額の損害賠償を容認する(≒契約解除)最高裁判決が確定していましたから、実質的には変更ないと考えられそうです。

 では、消滅時効はどうでしょうか。改正民法では、以前あった構造種別ごとに定められていた建築物に関する特別な規定はなくなり、「知った時から5年、行使できる時から10年」に統一されました。ただ、建築工事の請負契約書として長年業界で使われている「民間(旧四会、現七会)連合協定工事請負契約約款」では、民法より短い担保期間が設定されており(2020年からは構造種別にかかわらず2年に改定)、多くの工務店、住宅会社もこれに追従してきました。こちらの枠組みに変更がなければ、実質的な変更はないことになります。住宅の請負契約は消費者契約であることから、民法に比して極端に短い消滅時効は、消費者契約法により無効とされる可能性も考えられます。改正民法を受けて上記の「2年」という契約約款が変わっていくのか、今後の動向が気になるところです。
(その4 ~住宅の売買契約、どこが変わる?~ につづく)

(注記)
本コラムは、建築士の立場から見た改正民法の住まいづくりへの影響について、個人的見解をお話しているものです。改正民法や契約などの詳細については、弁護士等の法律専門家にご相談くださいますようお願い致します。

住まいのナビゲーター 
一級建築士 金山 眞人

次回のナビコラムは
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