利用者ルポ(Case15:設計事務所編)

Case 15:設計事務所編

Case 15:回遊動線を備えた長く住み続けられる住まいに

コンパクトな回遊動線を備えた長く住み続けられる住まいにリフォーム

Wさん夫妻は、3年前から住んでいる1LDKのマンション住戸をリフォームしました。リビング・ダイニング、寝室、水回りを回遊できるように動線を整え、少なかった収納を拡充。約60m²の住戸を夫妻の生活に合わせた空間構成に変えて、長く住み続けられる住まいを生み出しました。

生活の中心の場となるリビングダイニング。 生活の中心の場となるリビングダイニング。正面奥に続く寝室は、リビングからも直接出入りできるようにしました。

住まいづくりデータ(Wさん)
【家族構成】 ご夫婦 【依頼先】 設計事務所
【計画】 マンションリノベーション 【構造】 鉄筋コンクリート造
【竣工年月】 2022年9月
【家族構成】 ご夫婦
【依頼先】 設計事務所
【計画】 マンションリノベーション
【構造】 鉄筋コンクリート造
【竣工年月】 2022年9月
ナビセンターとの付き合い&家づくりの経緯

複数のリフォーム会社の提案を受けてモヤモヤしていた時の突破口に

Wさんご一家

Wさん夫妻が住むマンションは、夫婦それぞれに思い出がある都心部の街に立地し、駅から近く互いの通勤にも便利です。ただ、20年ほど前に建てられたマンションの1LDKの間取りは単身用を想定していたため、収納量や浴室の広さ、洗濯機の配置など、Wさん夫妻の生活に合っていない部分がありました。1年ほど生活して使いにくい部分などを拾い出し、リフォームの検討に踏み出しました。

Wさん夫妻は、複数のリフォーム会社に声をかけて少しずつ計画を進めていきました。気に入ったプランを提案する会社もありましたが、間取りの使い勝手や見積もりが適切かどうかなどを判断するのが難しく、依頼先を決めかねる状態でした。そうした時、インターネットの検索で住まいづくりナビセンターを知ったWさん夫妻はセカンドオピニオンを聞くようなつもりでナビセンターを訪れます。

「リフォーム基礎講座(マンション編)」に参加した夫妻は、その後すぐにリフォームに関する「ナビゲーション」を受けました。ここで、もっと目的を明確にしてから計画を進めた方がよいのではとアドバイスされて「住まいの計画書づくり」のプログラムへ。パートナープログラムを経て、依頼する設計事務所を決めることができました。

7カ月をかけて設計を進め、回遊動線や必要な収納を確保するなどWさん夫妻の生活スタイルに合った間取りが出来上がります。仮住まいしながらの工事も無事に進み、マンションを購入してから3年半余りで、装いを新たにした住まいの生活が始まりました。

Wさんの住まいづくり

必要な機能と動線を再構築

住まいづくりのきっかけ

2019年3月に1LDKのマンションを購入したWさん夫妻は、傷んでいた壁紙やフローリングを刷新し、トイレ機器を取り替えるといった簡易な改修を施してから同年7月に入居しました。いったん生活をしてみて、気になる部分が出てきたら本格的にリフォームするつもりでした。

手間を考えれば、入居する際に一気に改修した方が効率的でしょう。でも、使い勝手の良し悪しを見極めてからリフォームするほうが良い住空間を実現できると考えたのです。購入から入居まで3カ月というスケジュールを思うと、その間に大規模なリフォームを実施するのが難しいという判断もありました。

実際に住み始めてみると、単身用を想定していた当初の間取りでは収納量が足りません。また、キッチンに設置されていた洗濯機を洗面所の側に移したいなど、細かい部分で生活動線に合わない部分がありました。入居後1年ほど過ごしたWさん夫妻は、そろそろリフォームしようと動き始めます。

専門家に相談することに

住まいづくりナビセンターへ

来館→ナビゲーションを受ける

公平なセカンドオピニオンを聞くつもりで訪問

いよいよリフォームをすることになり、私たちはリサーチを始めました。リフォーム関連のイベントにも参加しながら依頼先を探し、複数のリフォーム会社に声をかけて提案してもらいました。

このうち2社のプランを気に入ったのですが、図面を見ただけでは本当に住みやすいのかどうかがよく分かりません。住宅設計のプロに見てもらったところ評価が低く、図面で良さそうに見えても、実際には使いにくいことがあるのだなと気づきました。そのほかにも提示された見積もりが適正なのだろうかなど、どこかモヤモヤした状態が続きました。

そんな頃インターネットの検索で知ったのが、住まいづくりナビセンターです。住まいづくりナビセンターは一般財団法人だから、公平なアドバイスをもらえるだろうという期待もありました。リフォーム会社の提案に対するセカンドオピニオンを聞くつもりでセンターを訪れたのです。

ナビの視点

困りごとの解決に向けて支援します

住まいづくりナビセンターでは、様々な情報提供や相談メニューを用意しています。Wさん夫妻はまず「リフォーム基礎講座(マンションリフォーム)」を受講されました。これは毎週開催している1時間のセミナーで、リフォームを考え始めた方向けに一級建築士である住まいのナビゲーターが基礎的な知識をお話しします。

もう1つ、リフォームを考えている方の最初の窓口となるメニューが「ナビゲーション」です。こちらは、リフォームの流れやどのような依頼先があるかといった基礎知識に加え、お客さまの状況や悩みを具体的にお聞きしてその方に合った当センターのセミナーやプログラムをご案内し、困りごとの解決やより良いリフォームの実現に向けた支援を行います。

いずれも企業の営業活動から離れた中立的な立場でお話しするので、安心してご相談いただけます。

住まいのナビゲーターより

Wさん夫妻のそれまでの経緯をお聞きし、それなら、住まいの計画書づくりに取り組むのが良いのではとお勧めしました。

Wさんご夫妻が住まいづくりナビセンターを訪問された時は、「リフォーム会社から魅力的な提案を受けたけれど、実際に住むとどうなのかが分からない」という状態でした。一度立ち止まって自分たちの考えを整理したいという気持ちが伝わってきました。

お話をうかがう中で、どういう暮らしをしたいのかというイメージをもう少し固めてからリフォームの計画を進めるのが良いのではないかとお伝えしました。具体的な会社に相談するとどうしても立ち止まりにくくなってしまうものです。でも、本当に望んでいる姿のリフォームを実現するには“急がば回れ”という気持ちの切り替えも大切です。

ナビゲーションとは

「住まいの計画書」をつくる

トレンドにとらわれず、二人のイメージを可視化できました

住まいの計画書づくりでは、写真を選ぶプログラムが印象的でした。写真を通して好きなものや嫌いなものを選ぶと、言葉だけのやり取りでは分からないイメージが伝わります。リフォームの話をしながら二人で「あれがいいね」と言っていても、普通ならその記録が残りません。写真選びでは、その時に考えたことの記録が残り、しかも可視化されます。2人がイメージしていることの違いも分かり、リフォーム計画に向けて貴重な経験になりました。

インターネットや雑誌などでは、リフォームやインテリアに関する情報がたくさん出回っています。ただし、そこで語られているのはその時々のトレンドや世代ごとの嗜好といった狭い範囲での良いもので、内容が似通っています。長く住んでいく住まいについて考えていくなら、もっと広い視野で捉えたほうがいいのではと感じていました。

その点、計画書の写真選びでは、例えば和洋折衷のものなどトレンドにとらわれない幅広い選択肢の写真が用意されていたので視野が広がります。自分たちの好みの特徴も分かり、さらにコメントを書き入れることで求めている方向性を整理していけたと思います。

ナビの視点

幅広い選択肢から好みを抽出

イメージに合った写真を選ぶために、ロココ調のインテリアからシンプルモダンなものまで多様なバリエーションの写真をそろえています。振れ幅の広い選択肢を用意することで、本当に好きなもの、いいなと感じるインテリアの傾向を抽出できるようにしているのです。

例えばご夫妻のうちどちらかが「好き」、どちらかが「嫌い」を選ぶ写真があったとします。写真を選ぶだけでなく、何が好きで、何を嫌いと感じたかをそれぞれの言葉で表現していくと、一見対照的な指向のなかにお二人が大切とされているものの共通要素が見つかる場合もあります。住まいのナビゲーターはこうした気づきを通じて、リフォームに対するお客さまの目的意識を整理していきます。

住まいの計画書づくりとは

住まいのナビゲーターより

Wさん夫妻の場合、「末永く暮らせる居心地の良い家」という言葉に行き着きました。

住まいの計画書では最後に、家づくりやリフォームに向けたタイトルを作ります。3回のプログラムを経て、Wさん夫妻は「末永く暮らせる居心地の良い家」という言葉に行き着きました。

Wさん夫妻は当初から、この家をリフォームしてずっと長く住めるようにしたいという希望をお持ちでした。自分たちの生活スタイルに合った収納や室内動線を実現して、心地良く暮らしたい。プログラムを通して、そうした方向性をお互いに確認されたように感じます。

「パートナープログラム」を利用

住まいのナビゲーターと話していく過程で、設計者と施工者が分かれているほうがより顧客目線での提案を受けられるなど、私たちにとってはメリットが多いと気づきました。一級建築士である住まいのナビゲーターに悩みを話し、アイデアをもらうというようなやり取りができたので、実際の計画でもこうしたコミュニケーションをしていければと思ったのです。

ただ、いわゆる建築士に依頼するのは気持ちの上でハードルが高かったのも事実です。私たちの住まいのリフォームにそこまでする必要があるのか、建築士との相性は大丈夫だろうかといった不安がありました。そこで、住まいづくりナビセンターに相談してみようと思い、パートナープログラムに進みました。結果的に、面談をした設計事務所に依頼してリフォームを進めました。

建築士に提示されたのは、私たち夫婦がそれぞれ動きやすい回遊動線を生み出しつつ、動線まわりに大きな収納をまとめるという間取りです。私たちの生活スタイルを理解し、限られた住戸面積を余すところなく活用してもらえるプランだと感じました。計画段階では浴室の大きさ、コの字形のキッチンレイアウトなど、諦めたことや迷ったこともありますが、これから長い時間夫婦で生活していくための心地良い住まいが出来上がったと思います。何より、住まいについてこれまで以上に深く考えたため「自分の家」という実感が強いですね。

ナビの視点

お客さまに合った依頼先選びを

リフォームに際してどこに依頼すればいいのかは、多くの方が悩むテーマです。まず思い浮かぶのはリフォーム会社ですが、それ以外にも設計事務所や工務店などの選択肢があります。住まいづくりナビセンターではナビゲーションやセミナーなどを通して、リフォームにはどのような依頼先があるか、依頼先タイプごとのメリット・デメリットは何かをご説明しています。

リフォームの条件やお客さまの指向によって、ふさわしい依頼先は異なるものです。分からない点があったら遠慮なくご相談いただき、納得のいく依頼先選びを進めてください。

設計事務所担当者様より

住戸全体に回遊動線を取り入れる間取りです

Wさん夫婦のリフォームでは、1年ほど生活していくつかの課題や要望が浮かび上がっていました。収納量が小さいこと、洗濯機は現在のキッチン内ではなく洗面所側に置きたいこと。一方で、寝室は寝るだけなのでベッドを並べる大きさがあれば問題ないなど、部屋の使い方のイメージもはっきりしていました。

これらを受けて提案したのが、寝室の出入り口を2方向に設け、住戸全体に回遊動線を取り入れる間取りです。収納は回遊動線まわりに確保しました。

建物のコンクリートスラブに段差があるため、既存の室内では天井に複雑な凹凸が生じていました。リフォームではこうした段差を解消して、視覚的に広がりを持つすっきりとした空間に整えています。

Wさんご一家

設計期間約7か月

工事に着手

施工期間約3か月

Wさんの新しい住まいが完成

こだわりのポイント

1.回遊動線まわりを収納で間仕切り
約60m²の住戸を夫婦で居心地良く過ごすためのポイントの1つが、二人の動きが交錯しない通り道をつくることでした。そこで導入したのが、リビングダイニングからキッチン、玄関、水回り、寝室までをぐるりと結ぶ回遊動線です。いずれも2方向に抜けられるため、二人が互いの動きを妨げることなく自由に行き来できます。

この回遊動線に沿って、課題だった収納を用意しました。リビングと寝室の間仕切りには造作家具を配し、リビング側からは飾り棚を備えたテレビボードとして、寝室側からはクローゼットとして使えるようにしています。廊下沿いにも収納を設けて、必要な収納量を確保しています。

回遊動線周りでは、引き戸を活用して限られた面積を有効活用しているのも特徴です。キッチン側と玄関の間に擦りガラスの引き戸を据えたほか、トイレ・水回りと廊下の間、寝室と水回りの間も引き戸としました。引き戸は開閉時にスペースが必要とならないので周辺の空間を無駄なく利用でき、開け放しにして両側の空間を一体化することも可能です。その時々に応じた開け閉めによって、住戸空間を多彩に利用することができます。

リビングダイニングから玄関方向を見る。 リビングダイニングから玄関方向を見る。擦りガラスの引き戸を開けると玄関に続く。

  • リビングの飾り棚。造作家具で寝室との間を仕切っている。 リビングの飾り棚。造作家具で寝室との間を仕切っている。
  • 風合いのある質感を備えた石畳調タイルで印象を一新した玄関。ガラス引き戸を閉めておくと室内側の冷暖房効率も高まる。 風合いのある質感を備えた石畳調タイルで印象を一新した玄関。ガラス引き戸を閉めておくと室内側の冷暖房効率も高まる。
  • キッチンから玄関前を通って洗面室に続く廊下。廊下面積を最小限に抑え、コンパクトながら収納量の多い間取りを実現。 キッチンから玄関前を通って洗面室に続く廊下。廊下面積を最小限に抑え、コンパクトながら収納量の多い間取りを実現。
  • 廊下の右手に新たな収納を設置。改修前はキッチンに置いてあった洗濯機を洗面室側に移した。 廊下の右手に新たな収納を設置。改修前はキッチンに置いてあった洗濯機を洗面室側に移した。

洗面室から寝室を見る。寝室には、洗面室とリビングにつながる2カ所の出入り口を設けた。 洗面室から寝室を見る。寝室には、洗面室とリビングにつながる2カ所の出入り口を設けた。

2.寝室は寝ることに特化
面積が限られた住戸内で必要な機能を確保するには、優先順位の低い要素を削ぎ落とす作業が欠かせません。Wさん夫妻が削ぎ落とした要素の1つが寝室の面積でした。

「寝室は、寝る時にだけ利用する」。これまでの生活を振り返ってそう判断したWさん夫妻は、寝室にはベッドを置いて周りを歩けるスペースがあれば良いと考えました。その結果、寝室の面積をぎりぎりまで抑え、その分の面積をリビングダイニングや収納に配分しました。

寝ることに特化しただけに、寝室では落ち着いて眠れるようにする工夫も凝らしています。明るいと気になるという夫の要望を受けて、既存の窓の内側に断熱ブラインドと引き込み式のふすま戸を設置しました。この二重の遮蔽装置は外から漏れ入る光や音を防ぐほか、断熱の効果も高めます。

ふすま戸は、既存壁の内側に設けたもう1枚の壁との間に引き込む方式を採用しました。ブラケットの電気配線なども壁の内側に通しているため配線や配管が露出せず、室内をすっきりとした印象にまとめる効果をもたらしています。

寝ることに特化させ、ベッドを置ける面積に抑えた寝室。間接照明を取り入れて落ち着いた室内空間に。 寝ることに特化させ、ベッドを置ける面積に抑えた寝室。間接照明を取り入れて落ち着いた室内空間に。

寝室の窓周り。サッシの内側に断熱ブラインドとふすま戸を設けて日射や音を二重に防ぎ、落ち着いて寝られる環境を確保した。 寝室の窓周り。サッシの内側に断熱ブラインドとふすま戸を設けて日射や音を二重に防ぎ、落ち着いて寝られる環境を確保した。

ふすま戸を閉めた状態。ふすま戸を開ける際は壁の内側に引き込む仕様にした。壁の内部にはエアコンの配管や電気の配線も通る。 ふすま戸を閉めた状態。ふすま戸を開ける際は壁の内側に引き込む仕様にした。壁の内部にはエアコンの配管や電気の配線も通る。

3.既存の装備を生かしつつ刷新
多くのマンションでは使える建材や水回りの配置などに決まり事があり、リフォームは定められた条件に基づいて計画を進める必要があります。Wさん夫妻の住戸の場合、天井や床周りのコンクリート躯体の凹凸が多く、使える床材の厚さに限りがあるなどの制約が生じていました。

また、Wさんが入居時に実施した簡易リフォームでは、調湿・脱臭機能を備えた壁材をリビングの壁に施工していました。このように、まだ新しい建材はそのまま利用することにしました。

リビングでは、以前あった納戸を取り壊してワークスペースに利用しています。この部分の壁には調湿・脱臭機能の壁材を施していなかったので、新しく本棚を造り付けました。収納力を確保しつつ、旧納戸部分と違和感なく一体化させています。

天井内のダクトも整理して、以前あった天井の不規則な凹凸を解消。シンプルな中にメリハリの効いた、居心地の良いインテリアにまとめました。

  • リビング。右手の壁は、入居時の改修で調湿・脱臭機能を備えた壁材を施工していた。これを生かしつつ、下部に棚を設けて収納力を確保。 リビング。右手の壁は、入居時の改修で調湿・脱臭機能を備えた壁材を施工していた。これを生かしつつ、下部に棚を設けて収納力を確保。
  • リビングからキッチン方向を見る。以前は段差のあった天井の高さをそろえてすっきりさせた リビングからキッチン方向を見る。以前は段差のあった天井の高さをそろえてすっきりさせた。左側の壁周りにはもともと納戸が設けられていた。
  • 納戸の壁を取り払ったスペースはワークスペースに利用。 納戸の壁を取り払ったスペースはワークスペースに利用。入居時に新設した壁材を張っていない部分には造り付け棚を設け、リビング空間と違和感なく一体化させた。
  • 改修前の位置はそのままに、独立型I形キッチンをコの字形配置のキッチンに変更した。< 改修前の位置はそのままに、独立型I形キッチンをコの字形配置のキッチンに変更した。

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