利用者ルポ(Case11:工務店編)

Case 11:工務店編[埼玉県 Aさま]

Case 11:共と個を大切に、二世帯住宅へ建て替え

「共」と「個」を大切に、二世帯住宅へ建て替え

建て主一家とお義母様が暮らすAさん邸は完全同居型の二世帯住宅です。お義母様の生活空間を1階に集約。キッチン、リビングダイニングや浴室を共有しつつ、ご主人の趣味の部屋をはじめ家族それぞれの場を確保しました。回遊動線を備えた生活しやすい空間構成の住まいになっています。

目的別に収納を整理してすっきりとしたくつろぎ空間に改修 切妻屋根が特徴のAさん邸 外壁の色はご主人がこだわって決めました

住まいづくりデータ(Aさん)
【家族構成】ご夫婦、お子様2人、お義母様【依頼先】工務店
【構造・工法】木造在来工法【竣工年月】2018年7月
【家族構成】ご夫婦、お子様2人、お義母様
【依頼先】工務店
【構造・工法】木造在来工法
【竣工年月】2018年7月

隠しごとなく「ウチの事情」を話せる関係を築けました

隠しごとなく「ウチの事情」を話せる関係を築けました

Aさんの奥様の実家を建て替えて、Aさんの4人家族とお義母様が暮らす家を新築しました。お義姉様(奥様の姉)も参加しながら仲の良い家族が力を合わせて計画を進行。お義姉様の部屋も用意しています。

お義母様が結婚当初から暮らした築50年の家は、いろいろな面で暮らしにくくなっていました。2012年に亡くなったお義父様は自宅内でクリーニング店を構え、生前は「仕事を辞めたら家を新しくして娘の家族と一緒に住もう」と望んでいました。2人の娘さんのご主人たち(うち一人がAさん)の賛同もあり、建て替えに至ったのです。

とはいえ、家づくりを進めるには何から始めれば良いのか見当がつきません。お義姉様は、2年ほど前に新聞広告で知った住まいづくりナビセンターを訪れてみました。最初の「ナビゲーション」でナビゲーターと話をしてみると、どう進んで良いか分からない状態に一筋の光が見えたように感じました。そこで家族を誘って「住まいの計画づくり」に参加。全員でプログラムに取り組みました。さらに「パートナープログラム」へと進み、地元の工務店とのやり取りを体験したうえで具体的な家づくりに着手しました。

家づくりを終えて実感するのは、密なコミュニケーションの大切さです。住まいづくりナビセンターのナビゲーターや設計施工を依頼した工務店の人たちとは「隠しごとなく『ウチはこうなんです』とざっくばらんに話していけたのが良かったですね。当初のイメージがそのまま実現しなかった部分もありますが、どれも話し合った結果なので納得でき、心残りのない家づくりができました」と振り返ります。

Aさんの住まいづくり
住まいづくりのきっかけ

亡父の思いを受け、老朽化した家を建て替え

実家(Aさんの奥様の実家)は自宅で長くクリーニング店を営んでいました。父の他界後は母が独りで暮らしていましたが、築50年ほどなので古く、寒く、地震で揺れる。家の中にあったクリーニング店と工場が広い面積を占めていたこともあり、現在の暮らしに合った家にしたいと思いました。姉妹(建て主の奥様の姉妹)の夫たちも、家を建て直して一緒に暮らすのがいいと賛成してくれ、妹一家が同居することにしました。

専門家に相談することに

住まいづくりナビセンターへ

来館→ナビゲーションを受ける

自分たちの暮らしを見直すきっかけに

漠然と家づくりを考えていた時期に、住まいづくりナビセンターの新聞のコラムを見ました。ウェブサイトで調べてみると、中立の立場からのアドバイスを受けられ、家づくりを強要されることはないといいます。自分たちの暮らしを見直すためのプログラムが用意されている点にも興味を持ちました。

とはいえ、実際に足を運ぶのには勇気が必要です。まずは一人で、清水の舞台から飛び降りる覚悟で訪ねてみたところ、ナビゲーターがこちらの言葉に丁寧に耳を傾けてくれました。感じが良く安心できたので、家族皆で参加しようという話になりました。

プログラムを通して、世間話を含めてナビゲーターにいろいろな話をし、そのなかから家族の思いを汲み取ってもらいました。私たち自身も自分たちの希望や好みを整理・確認していけたのが良かったと思います。

ナビの視点

建て主が自立できるようにするお手伝い

家を建てようとする方の多くは、何から取り組み、家づくりのプロに何を聞けばよいのかが分からずに不安を抱えています。住まいづくりナビセンターでは、そうした方たちに家づくりの基本的な流れをお伝えしたうえで、ご家族の希望を整理していくお手伝いをします。こうした作業によって、お客様自身がプロと適切にコミュニケーションできるようになるからです。

住まいのナビゲーターより

実際には新居に住まないお義姉様が、まず住まいづくりナビセンターに足を運んで最初のナビゲーションを受けられました。ご家族同士が密にコミュニケーションを取っているので、その後も順調にプログラムを進めることができました。

実際には新居に住まないお義姉様が、まず住まいづくりナビセンターに足を運んで最初のナビゲーションを受けられました。ご家族同士が密にコミュニケーションを取っているので、その後も順調にプログラムを進めることができました。

住まいづくりを進める過程では、様々な選択肢の中から1つを決定するという場面が多くあります。時には意見が分かれることもある、そんな時、家族間の意見調整や依頼先とのやりとりをスムーズに進めるためには「住まいづくりのリーダー」の存在が必要だと感じます。Aさんご家族の場合、信頼の厚いお義姉様の存在が程好い距離感でAさん家族とお義母様の建替え計画を上手にリードされていらっしゃいました。

ナビゲーションとは

「住まいの計画書」をつくる

家族の好みの共通点が明確に

プログラムの最初に宿題が出され、一緒に住む家族について、それぞれの趣味や1日のタイムスケジュールなどをまとめました。現在住んでいる家の気に入っているところ、不満なところなどをナビゲーターにヒアリングをしていただくことで、現在のライフスタイルを改めて見つめ直すことができました。
既存の住まいの図面は増築前のものだったのですが、増築部分や家具の配置などもナビゲーターが描き加えてくれました。なくなってしまう家の記憶が残るのでありがたかったですね。

写真選びのプログラムでは、「木の質感が好き」で「ゴチャゴチャしたものやコンクリートなどの冷たい素材感は好みでない」という家族共通の好みが分かりました。話しているだけではなかなか気づきませんが、写真を見て選ぶと好き嫌いの対象がはっきり浮かび上がるのが面白かったです。

ナビの視点

潜在的な要望や好みに対する気づきを得る

「住まいの計画書」は3段階に分けて取り組んでいただくプログラムです。自分たちの暮らし方を見直し、写真や言葉を用いながら家族がそれぞれに求める住宅の姿を抽出していきます。今まで気づかなかった住まいへの希望を確認したり、ご家族の意外な好みを知ったりすることで、自分たちが進める家づくりの方向性を家族で共有していただくのが狙いです。

住まいの計画書づくりとは

住まいのナビゲーターより

Nさまが愛着をもてる、そんな住まいづくりのお手伝いができたと感じています

プログラムのために来館されたAさんのご家族とは、時間をかけてさまざまな話をしました。何気ない会話の中に、家づくりに向けたたくさんのヒントがちりばめられているものです。「住まいの計画書」自体はご家族の生活にふさわしい設計ができるように準備するのが目的ですが、次の依頼先探しへと進まれる際に、どのような依頼先との相性が良いのかを見極めてアドバイスする材料にもなります。

「パートナープログラム」を利用

「信頼できる依頼先」に巡り会えた幸運

住まいの計画書づくりを終え、引き続きパートナープログラムを申し込みました。ナビゲーターから、私たちには工務店が合っているのではというアドバイスがあり、登録工務店との面談に進みました。

実はこの段階ではハウスメーカーと工務店のどちらにするか迷っていて、耐震性などの性能面で工務店は大丈夫なのかという不安を抱いていました。そこで面談時に質問をたくさん用意して、工務店の社長にぶつけたのです。直前に起こった熊本地震で耐震等級2の長期優良住宅が倒壊したという話も耳にしていたので、そうした点に対する考えも尋ねました。すると社長は専門的な話を私たちが理解できるよう、1つひとつ丁寧に答えてから、「でもすべてにおいて“絶対”ということはないんですよね」と言われた。正直な返答に「信用できる」と感じました。以前からナビゲーターに「信頼できる依頼先を選ぶことが大切」と言われてきましたが、この社長と出会い、信頼感とはこういうことかと実感しました。

ラフの間取り案と概算の提示を受けてプログラムを終了した後に、具体的な家づくりをお願いしました。設計の段階では「住まいの計画書」が大活躍!家族のことやこんな暮らしがしたいといったことが盛り込まれているので計画の土台となりました。また、いろいろと迷うことの多いこの段階で、何度も見返しては大切なことは何だったのかを振り返ることができました。工事の作業中には、担当者である設計士や現場監督、大工さんたちとも長く接しました。総じて感じたのは、彼らのチームワークの良さです。私たち家族も話しやすく、良いコミュニケーションが取れたので、安心して計画を進めることができました。

ナビの視点

プログラム中はいつでもアドバイス

パートナープログラムは、工務店など依頼先との話し合いの場をご提供するのが私たちの役割です。最初にお互いをご紹介した後はナビゲーターは下がり、当事者同士で話してもらいます。工務店などと直接話し合う場面を経験することで、建て主が自立してプロとやり取りしていく準備をしていただきたいと考えています。パートナープログラムの期間は希望されれば何回でもアドバイスしますので、困ったり迷ったりしている時は遠慮なく声をかけてください。

住まいのナビゲーターより

Nさまが愛着をもてる、そんな住まいづくりのお手伝いができたと感じています

ヒアリングを通して、Aさんご家族のコミュニケーション能力の高さを感じていましたのでどの依頼先でも上手く進めていけると思いました。アドバイスとして住宅メーカー、工務店、設計事務所それぞれの特徴をお伝えした上で、さらにAさんご家族の状況や希望に合った依頼先として工務店を候補としてお考えになってみてはとお伝えしました。長年、地域でクリーニング店を営まれていたこと、その地に建て替えられること、この先、お子さまの代まで長くお住まいになることを希望されていることから、地元の状況に精通し、将来のメンテナンスもフットワーク良く動いてくれる依頼先が良いのではと考えてのアドバイスでした。 依頼先の選択に迷われるお客様は多くいらっしゃいます。スケジュールや予算、状況や要望は皆様それぞれですが、じっくりヒアリングすることで依頼先の方向性が見えてくることがあります。断言できることではありませんがアドバイスとしてお伝えできることはさせて頂いています。

工務店のひとこと

Nさまが愛着をもてる、そんな住まいづくりのお手伝いができたと感じています

ご主人の「自分は普段あまり家にいないので、奥さんの使いやすい家に」という言葉が印象的でした。同時に、ご家族からは、亡くなられたお義父様へのリスペクトを強く感じました。私たちは、日常の暮らしやすさと、知り合いの来訪や大勢の親族の集まりといった非日常の場面への対応を考えながら間取りを提案しました。

打ち合わせは、お義姉様が窓口になりご家族の意見調整をしてくださったため順調に進められました。皆さんが1つひとつの課題を前向きにとらえ、協力して取り組んでくださったので、私たちにとっても楽しい家づくりの時間となりました。住まいづくりナビセンターを経由した結果、進む方向にブレや迷いがないのも良かったのかもしれません。

設計者のひとこと

設計期間約6カ月

工事に着手

施工期間約8か月

Aさんの新しい住まいが完成

こだわりのポイント

1.日常と非日常の区分もできる回遊動線
4人家族のAさんご一家とお義母様が暮らす完全同居型の二世帯住宅です。キッチンやリビングダイニング、浴室などを共有しつつ、それぞれが気兼ねなく過ごせるような独立性ある空間の確保も必要でした。亡くなられたお義父様の仏壇を備えた和室では、大勢の親族が集まったり、クリーニング店時代からお付き合いのある地域の仲間を迎えたりする機会が少なくありません。

こうした条件を踏まえ、客間を兼ねた和室は玄関から直接通じる出入り口を設けて、襖を開けばリビングダイニングと一体化する配置としました。さらに玄関からお義母様の寝室、水回り、キッチンやリビングダイニングなどを結ぶ回遊動線を階段周りに配し、生活の利便性を高めました。玄関横に配したお義母様の寝室は水回りにも近く、1階で日々の生活が完結するようにしています。

  • 仏壇を備えた和室からリビングダイニングを見る。和室には玄関から直接通じる扉を設けた。 仏壇を備えた和室からリビングダイニングを見る。和室には玄関から直接通じる扉を設けた。
  • 玄関まわり。階段室を中心に回遊動線を確保して生活の利便性を高めた。 玄関まわり。階段室を中心に回遊動線を確保して生活の利便性を高めた。

2.心落ち着く細部へのこだわり
Aさん邸は、完成して数カ月という新しさにもかかわらず落ち着いた雰囲気を醸し出しています。そう感じさせる理由の1つは、木の質感を重視した室内空間と、随所に配した馴染みある家具や道具の存在があります。

大黒柱や天井の梁が露出した内装は工務店がこだわりとするポイントでした。ここでは木の質感を大切にしつつ、天井や壁の一部に挿し色を加えて洗練した雰囲気を与えています。

リビングダイニングのテーブルやソファ、和室のタンスなど、ほとんどの家具は以前の家で使っていたものをそのまま利用しています。新居にきっちり収まるようにするため、持ち込む家具を計画時にすべて拾い出して配置を検討しました。こういったこともナビゲーターからのアドバイスがあったからこそ。「持ち込む家具や家電は寸法を測って、計画の段階から検討できるように設計者に伝えておきましょう」と言われたことを実践しました。先のことまで考えた的確なアドバイスは大変役に立ちました。
リビングや玄関には飾り棚をしつらえ、思い出の写真や亡父が愛用した古いアイロンを並べられるようにしています。

  • どっしりした大黒柱のあるリビング どっしりした大黒柱のあるリビング。天井の一部に配した挿し色が室内のアクセントに。以前から使っていたテーブルやソファ、写真を並べた飾り棚が思い出を伝える。
  • ダイニングの神棚 ダイニングの神棚。旧宅で使っていた棚を洗ってきれいにしつらえた。
  • どっしりした大黒柱のあるリビング。 どっしりした大黒柱のあるリビング。天井の一部に配した挿し色が室内のアクセントに。以前から使っていたテーブルやソファ、写真を並べた飾り棚が思い出を伝える。
  • ダイニングの神棚。 ダイニングの神棚。旧宅で使っていた棚を洗ってきれいにしつらえた。

洗面所やトイレも木の什器を配して、機能性と落ち着きを併せ持つ空間としました。1階のトイレには、お義母様が全体の雰囲気に合わせて選んだ木で枠取りした鏡を取り付けました。
2階の洗面所の収納は、内部の配管に合わせて引出しの奥行を調整するなど、工務店とAさん一家が密にやり取りし、細かい要望に対応して実現させました。

  • 落ち着いた木調の空間にまとめた1階のトイレ 落ち着いた木彫の空間にまとめた
    1階のトイレ
  • 収納計画を考えて細かく設計した2階の洗面所。 収納を考えて細かく設計した2階の洗面所

3. 家族それぞれの居場所をつくる
仲の良い家族にとって、一緒に過ごせる場所はもちろんのこと、各自の居場所を確保することも大切です。全員が集う1階のリビングダイニングに加えて2階の階段横にはAさん世帯のためのファミリールームを設けたほか、個々のスペースづくりにも気を配りました。

  • 2階のファミリールーム。 2階のファミリールーム。階段横の一画に、
    オープンなスペースとして用意した。

住まい手の中で唯一の男性となるAさんには、玄関とは別の入り口を設けた趣味の部屋を確保しました。家族が「貴賓室」と呼ぶ小部屋です。小さな魚を育てる水槽やゴルフ用品を置いて、一人でゆったりとした時間を過ごせるようにしています。

  • Aさんの趣味の部屋。 Aさんの趣味の部屋。玄関とは別に入り口を設けた独立空間としている。

お義母様の部屋は、車通りの多い前面道路から一番奥まった一画に配置しました。夫妻の寝室や子供たちの個室に加え、計画の取りまとめ役を果たしたお義姉様のために多目的に使える落ち着いた和室を用意しました。

  • 障子越しに柔らかな光が入るお義母様の寝室。 障子越しに柔らかな光が入るお義母様の寝室。ベッドから見やすいようにテレビを設置した。
  • 2階の義姉の部屋。 2階のお義姉様の部屋。多目的に使える和室にした。

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